杖選び体験記 ― 「まだ大丈夫」を「使ってよかった」に変えるまで

「痛い」と聞いて気づいたこと
母は自然の中や観光地を歩き回るのが好きで、休日になるとよく出かけていました。私はそんな母を頼もしく思っていました。
ところがある時期から「歩く時に足の付け根がたまに痛くなるのよね」と言うようになりました。話を聞くうちに、左足をかばうようにゆっくり一歩ずつ踏みしめながら、お出かけや買い物をしているらしいとわかってきました。散歩の距離も、少しずつ短くなっているようでした。
離れて暮らしていると、こうした変化に気づくのが遅れがちです。電話の声では分からなくても、実際に会って見ると「あれ、様子が違うな」と気づくことがあります。今回のように歩き方の変化は、体からの小さなサインだったのだと思います。
「杖はまだ早い」――母の抵抗とどう向き合ったか
少しでも歩く助けになればと、誕生日に杖をプレゼントしたいと声をかけました。ところが返ってきたのは「杖を使うほど歩けなくなったわけじゃない」という言葉。杖という響きに対して、「年を取った証拠」「もう自分は弱ってしまった」というマイナスのイメージを持っている様子でした。これは多くの高齢者に共通する感覚かもしれません。
正面から勧めても受け入れてもらえなかったので、伝え方を変えることにしました。
「痛いのを我慢して歩いてつまづき、骨でも折ったら、安静にしている間に筋力が落ちて、骨が治っても歩けなくなるよ。それなら杖をついてでも歩いて、筋力を維持したほうがいいんじゃない?」
「杖=衰えの象徴」ではなく、「杖=歩き続けるための道具」という視点で話したところ、母もようやく納得し、杖に興味を持ってくれるようになりました。介護や高齢の家族への提案は、正論をぶつけるより、相手が納得できる理由を一緒に見つけることが大切だと感じた出来事です。
デパートで実物を見て選んだ理由
杖はネット通販でも探すことができます。種類も豊富で、価格を比較しながら選べるのは便利です。しかし今回はあえて、母をデパートに連れていき、実際に杖を見て、持ってもらうことにしました。
理由は単純で、杖は「見た目」だけでなく「重さ」「握りやすさ」「体格に合った長さ」が本人の使い心地を大きく左右するからです。写真だけでは分からない質感や、実際に手にした時の安心感は、店頭でしか確かめられません。特に背の高い低いによって、既製品の標準サイズでは長さが合わないこともあるため、よさそうでも実際に試してみて選択肢から外れたり、逆に入ったりするものもありました。
今どきの杖はここまで進化している
杖というと、木製の頑丈な一本杖を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。私自身もそうでした。しかし実際に売り場を見てみると、想像以上に選択肢が広がっていることに驚きました。
- 軽量素材のもの:アルミやカーボンなど、見た目より軽く持ち運びやすい
- 折りたたみ式:使わない時はコンパクトに畳んでかばんに収納できる
- 豊富な色柄:単色だけでなく、花柄など華やかなデザインも充実
- サイズ展開:身長に合わせて選べる短めサイズもあり
母はまず、おしゃれな杖に目を輝かせました。単色ではなく花柄が描かれた杖はとても鮮やかで、持ち歩く時の気分も明るくしてくれそうです。悩んだ末に選んだのは、気に入った色柄で、かつサイズの合う折りたたみ杖。使わない時はかばんにしまえるので、外出先で杖が不要になった場面でも荷物にならず持ち歩けます。
※上記の商品リンクは広告(アフィリエイト)を含みます。
杖を持って変わった母の毎日
購入した当初、母は「恥ずかしい」と言って人前で使うのをためらっていました。しかし実際に使ってみると、やはり歩行が安定して安心なのか、少しずつ杖を持って出かける機会が増えていきました。
以前は痛みをかばって短くなっていた散歩や買い物の距離も、杖のおかげで以前より歩けるようになったようで、母の表情も明るくなりました。「杖を持つこと」への抵抗感は、実際に使ってみて安心感を実感することで自然と薄れていくのだと感じています。
高齢の家族に杖を勧める時は、ぜひ「本人が納得できる理由」と「実際に試して選べる環境」の両方を大切にしてみてください。この提案をしてよかったと、心から思っています。
介護まわりでは、実家の母が、自治体の助成金を使って補聴器を作った話もあります。申請から受け取りまでの流れや、助成額が自治体でどれくらい違うのかは、補聴器の助成金はいくら?申請から受け取りまでの流れを母の話から調べてみたにまとめました。


